人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律とは?
要約:
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)は、2025年に成立・施行された日本の法律です。AI開発・活用の遅れや国民の不安を背景に制定され、研究開発の促進や人材育成、ルール整備を通じて国民生活の向上と経済発展を目指します。介護現場でも適切な理解と活用が求められます。
生成AIのリスクを考えると介護の現場での導入に抵抗があったけれど、法律が整備されたと聞き気持ちが変化してきた人はいませんか?
この記事ではそんな人に知ってほしい、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律について詳しく解説します。
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律とは?
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律とは、2025年5月28日に成立し、2025年9月1日に全面施行されたAI法とも呼ばれる日本の法律です。
2026年現在日本国内のAI開発・活用は遅れており、また、多くの国民がAIにより発生するリスクに不安を抱えている状況であるため、それを解消しAI活用による国民生活の向上や経済の発展を目指すために制定されました。
内閣府のホームページには、法律文の全文だけではなく、以下のことが記載されています。
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律の概要
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案に対する附帯決議
- 【概要(英語仮訳)】 the AI Act(Overview)(Provisional Translation)
介護の現場でルールを守り正しくAI活用を推進するためには、上記の内容にも目を通し、理解を深めておくのが大切だと言えるでしょう。
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)の概要

画像出典:内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)の概要」
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)の概要とは、上記画像の形で内閣府のホームページに掲載されている、AI法の必要性、概要について解説した資料です。
資料の内容について項目別にご紹介します。
法律の必要性
AI法の概要では、法律の必要性について「日本のAI開発は遅れている」「日本のAI活用は遅れている」「多くの国民がAIに対して不安」の3つが背景にあると記載されているため、この3つの項目についてそれぞれ解説します。
日本のAI開発

画像出典:総務省 令和6年版情報通信白書「第9節 AIの動向」
日本のAI開発が遅れていることに関して、現在広く使用されているAIサービスとその開発国は以下の通りです。
|
AIサービス名 |
開発企業 |
本拠地 |
概要 |
|
OpenAI |
アメリカ |
サンフランシスコ発の代表的生成AI |
|
|
Google DeepMind |
イギリスとアメリカ |
Google発の生成AI |
|
|
Anthropic |
アメリカ |
AnthropicはOpenAI出身者が設立 |
|
|
xAI |
アメリカ |
xAIはイーロン・マスクが設立 |
|
|
Meta |
アメリカ |
ソースコードが入手可能 |
|
|
Mistral AI |
フランス |
オープンソースのモデルが存在 |
|
|
Alibaba |
中国 |
用途に応じて最適なモデルが自動で切り替わる |
主要なAIの開発国に日本は含まれておらず、アメリカ、イギリス、フランス、中国が中心となっていることがわかります。
また、総務省が2024年に公表した「令和6年版情報通信白書」内において、2023年に新たに資金調達を受けたAI企業数はアメリカが圧倒的に多く897社ですが、日本は42社で10位という結果です。
これらのことから、日本は世界トップ層の基盤AI開発では存在感が薄いと言えるでしょう。
日本のAI活用

画像出典:総務省 令和7年版情報通信白書「第Ⅰ部 特集 広がりゆく『社会基盤』としてのデジタル 第2節 AIの爆発的な進展の動向 2 AI利用の現状 (2) 企業におけるAI利用の現状」
日本のAI活用が遅れていることに関して、2025年に公表された「令和7年版情報通信白書」において、2025年の日本の企業における生成AIサービスの利用経験は55.2%と、アメリカ、ドイツ、中国と比較して35%程度低いことがわかりました。
このことから、日本ではまだAI活用を「自分事」として捉えていない人が多いとわかります。
介護の現場でも、導入時になぜ業務でAIを使用するのかを研修などでしっかりと理解してもらうことが重要です。
AIに対する不安

画像出典: 総務省 令和7年版情報通信白書「第Ⅰ部 特集 広がりゆく『社会基盤』としてのデジタル 第2節 AIの爆発的な進展の動向 2 AI利用の現状 (2) 企業におけるAI利用の現状」
AIに対する不安に関して、2025年に公表された「令和7年版情報通信白書」において、生成AI導入に際しての懸念事項についてのアンケート調査結果として、上記画像の結果が公表されました。
「効果的な活用方法がわからない」が30.1%と最も多く、次いで「社内情報の漏洩などのセキュリティリスクがある」で、日本人のコンプライアンス意識の高さを伺わせる結果となりました。
介護の現場でも、AI法だけに頼らずガイドラインやルールをしっかりと定めてAIを活用するのが大切だと言えるでしょう。
法律の概要
AI法の概要では、法律の概要について7つの項目が挙げられているため、それぞれ解説します。
目的

画像出典: 総務省 令和7年版情報通信白書「第Ⅰ部 特集 広がりゆく『社会基盤』としてのデジタル 第2節 AIの爆発的な進展の動向 2 AI利用の現状 (2) 企業におけるAI利用の現状」
AI法の目的については、第一条に「国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と記載されています。
一方2025年に公表された「令和7年版情報通信白書」において、生成AIの活用による効果・影響についてのアンケート調査結果として上記画像の結果が公表されました。
日本においては「業務効率化や人員不足の解消につながる」が32.8%、「ビジネスの拡大や新たな顧客獲得につながる」が22.7%で前向きな回答が上位を占めたため、AI法を守って生成AIを積極的に活用すれば、もっと国民生活は向上し、経済は発展するでしょう。
介護の現場でもAIをやみくもに怖がるのではなく、どのようなメリットがあるかに目を向けることが大切です。
基本理念
AI法の基本理念については、第三条に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進は、科学技術・イノベーション基本法第三条に定める科学技術・イノベーション創出の振興に関する方針及びデジタル社会形成基本法第二章に定める基本理念のほか、この条に定める基本理念に基づいて行うものとする。」と記載されています。
科学技術・イノベーション基本法の第三条では、科学技術・イノベーション創出の振興に関する方針について自然科学と人文科学の調和のとれた発展を目指すこと、全ての国民が科学技術とイノベーションの創出の恩恵を受けられるようにすることなどが定められています。
一方デジタル社会形成基本法の第二章では、デジタル社会を形成することで経済構造改革の推進と産業国際競争力の強化を行うこと、活力ある地域社会を実現することなどが定められているのです。
これとAI法の第三条に記載されたAI産業の国際競争力を高めること、AIの研究開発や活用についての国際協力において主導的な役割を果たすことなどが付け加えられてAI法の基本理念となっています。
AI戦略本部
AI戦略本部については、第十九条に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、人工知能戦略本部を置く。」と記載されています。
また、第二十二条に「本部の長は、人工知能戦略本部長とし、内閣総理大臣をもって充てる。」、第二十四条に「人工知能戦略本部員を置く。」「本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。」とも記載されているのです。
このことから、日本のAI戦略については内閣が主導して行うことがわかります。
AI基本計画
AI基本計画については、第十八条に「政府は、基本理念にのっとり、前章に定める基本的施策を踏まえ、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な計画を定めるものとする。」と記載されています。
またAIの研究・開発・活用の推進のために政府が実施する施策の基本的な方針、施策、必要事項を定めて閣議決定をし、その内容を公表することも定められているのです。
AI基本計画についてもっと詳しく知りたい方は、次のページもごらんください。
基本的施策
基本的施策については、第十一条から第十七条にかけて次の内容が記載されています。
|
項目 |
概要 |
|
研究開発の推進など |
AI技術の基礎研究から実用化のための研究開発までの一貫した推進を行う |
|
施設や設備などの整備と共用の促進 |
AI技術の研究開発と活用のための施設、設備、知的基盤を研究開発機関や活用事業者が広く利用できるようにするための施策を実行する |
|
適正性の確保 |
AI技術の適正な研究開発と活用のため国際的なルールの趣旨に即した指針の整備や施策を実行する |
|
人材の確保など |
AI技術について専門的で幅広い知識を持つ多様な分野の人材の確保、養成、資質の向上に必要な施策を実行する |
|
教育の振興など |
国民がAI技術に対する理解や関心を深められるよう広報活動や教育活動を行う |
|
調査研究など |
AI技術に関する調査や研究を行い、その結果に基づいて、研究開発機関、活用事業者などに対し指導、助言、情報提供を行う |
|
国際協力 |
AI技術の研究開発と活用に関する国際協力を推進するとともに、国際的なルールの策定に積極的に参加する |
基本理念やAI基本計画に基づき、具体的に何を行うのかが示されていると言えるでしょう。
責務
第六条には研究開発機関の責務、第七条には活用事業者の責務、第八条には国民の責務が以下のように記載されています。
|
項目 |
概要 |
|
研究開発機関の責務 |
研究開発機関はAI技術に専門的で幅広い知識を持つ人材育成に努め国と地方公共団体が実施する施策に協力する |
|
活用事業者の責務 |
活用事業者は基本理念に基づきAIを利用することで事業活動の効率化と高度化、新しい産業の創出に努め、国と地方公共団体が実施する施策に協力する |
|
国民の責務 |
国民は基本理念に基づきAIに対する理解と関心を深めるとともに、国と地方教協団体が実施する施策に協力する |
介護事業者は、AIを業務に活用する「活用事業者」であると同時に、社会の一員としての「国民」にも該当します。
そのためAIについて学び、活用することで業務の効率化や新しい事業の創出に積極的に取り組み、国や地方公共団体が行う施策には協力することが大切です。
附則
附則の第一条にはAI法の施行日、第二条には必要があれば内容の見直しを行う旨が記載されています。
AIは加速度的に進化するため、将来的に法律もそれに応じた内容を少しずつ付け加えていく必要があると予想されます。
そのため、AIを活用する介護事業者としては、法律が改正された場合はその内容に関心を持ち、理解をしておくことが重要です。
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案に対する附帯決議
附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したもので、政治的効果はありますが法的効力はありません。
附帯決議が活用される例として、条文修正には至らなかった内容を附帯決議に入れておくことで、運用に関する話し合いが国会で行われる場合があります。
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案に対する附帯決議は15項目あり、その概要は以下の通りです。
- AIの研究開発および活用によって人間の尊厳を損なわないようにする
- AIに関する施策の実施にあたっては、リスクの最小化とAI導入促進が国にとっても便利で有益かどうかを考慮する
- AIの利活用に際しての留意点やリスクの回避策などについて、事業者や国民に対して十分に周知し、AIリテラシー教育を推進する
- AI技術を悪用したディープフェイクポルノと、中でも児童の画像などを使用したものへの対策については法律に基づき厳正に取り締まりを行う
- 日本語の大規模言語モデルをベースとした、国産の生成AIサービスの実用化に向けた研究開発とデータ整備を官公庁と民間企業が協力して行う
- AI関連産業のイノベーションと健全な競争を促進するため、公正で開かれた市場環境を整備する
- AI人材の育成を強化する
- AI活用は行政サービスの向上につながるため国、地方公共団体、地域の民間事業者によるAIの積極的な利活用に向けた環境の整備に努める
- 活用事業者等に対する調査、指導、助言などに当たっては、事業者の営業秘密や知的財産権の保護に配慮しつつ、過度に重い負担や情報開示を求めないようにする
- 広島AIプロセス国際行動規範の「報告枠組み」に基づき報告書を提出する活用事業者などに対しては、既存の国内法制度に基づく報告義務に最大限活用する
- AI技術は加速度的に進化するため、AI法やAI基本計画については継続的に見直しを行う
- AI戦略本部の組織体制については、各省庁の縦割りをできるだけ排除する
- AI戦略本部に対して専門的な観点から助言を行えるようにするため、多様性のある有識者から構成される会議を早期に設置する
- AIのリスクへの対応について常に最新の知見の情報収集に努め、必要な対応について継続的な検討を行う
- AIの利用に伴う知的財産権、パブリシティ権などの権利侵害に対応するため、必要に応じて関連法制の整備を含めた対応のあり方について検討する
広島AIプロセス国際行動規範とは、2023年10月30日にG7首脳によって策定されたAIについての国際的な行動規範です。
介護事業者としては、活用事業者としてAIリテラシー教育をしっかりと行い、利用者と職員の人間の尊厳を損なわない形でのAI利用を推進することが重要です。
参考:衆議院「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案に対する附帯決議」
参考:内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)」
法律に即してAI活用を積極的に推進したい方はプレゼンスイノベーションラボにご相談ください

AI法に基づき介護事業者としてAI活用を積極的に推進したい方は、プレゼンスイノベーションラボにご相談ください。
プレゼンスイノベーションラボでは介護・福祉業界でのAI活用は業務効率化やコスト削減だけではなく、高齢者の安全確保や介護スキルの向上にも役立つと考えています。
そのため、プレゼンスイノベーションラボでは介護・福祉現場でITリテラシーをもった人材育成に注力したり、DX推進支援を行ったりしているのです。
サポートにかかる費用がご不安な方には、補助金活用でコスト削減のご提案も行っています。
AI活用に向けて新しい第一歩を踏み出し、よりよい介護の現場へと事業所を刷新していきたい方は、次のページからお問い合わせください。
お問い合わせ|Presence Innovation Lab.|プレゼンスイノベーションラボ
まとめ
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律とは、2025年5月28日に成立し、2025年9月1日に全面施行されたAI法とも呼ばれる日本の法律です。
介護の現場でルールを守り、正しくAI活用を推進するためには、AI法について理解を深めておくのが大切だと言えるでしょう。
この記事も参考にして、AI法に基づきぜひ積極的に事業所内でAI活用を推進してみてください。
※本記事は発表当時のデータに基づき、一般的な意見を提供しております。経営上の具体的な決断は、各々の状況に合わせて深く思案することが求められます。したがって、専門家と話し合いながら適切な決定を下すことを強く推奨します。この記事を基に行った判断により、直接的または間接的な損害が発生した場合でも、我々はその責任を負いかねます。

